2015.10.27 H26改正マンション建替法について

 平成26年に「マンションの建替えの円滑化等に関する法律(以下、「マンション建替法」)が改正され、①マンション敷地売却制度、②容積率の緩和措置等が定められました。今回の法改正はどのようなものなのでしょうか?簡単にその概要を考察してみたいと思います。

改正前の法制度

 現在、マンションについては、①「民法」、②「建物の区分所有等に関する法律(以下、区分所有法)、③「マンション建替法」の三制度を軸として運用されています。
 「区分所有法」は、民法の特別法として昭和58年に制定され、マンションを含む区分所有建物の所有関係や、建物及びその敷地の共同管理、建替えの意思決定方法について規定しています。また、「マンション建替法」は、平成14年に制定され、老朽化したマンションの建替えの円滑化を図る為、マンション建替組合の設立やマンション建替事業について規定しています。

マンションの現状

 平成26年において、マンションストック総数は約613万戸、そのうち旧耐震基準に基づき建築されたものは約106万戸と言われています。さらに、築後40年超のマンションは約44万戸あると言われ、今後老朽化するマンション数は飛躍的に増加する見通しになっています。
 また、国土交通省資料によると、マンションの経年と共に居住者の高齢化が高まり、空き住戸が増加する傾向にあります。
 そのような中、マンション建替法を利用したマンション建替え実績は、昨年までの段階で200件弱、約1.6万戸に留まっております。
 このように、老朽化マンションの増加、耐震不足のマンション、管理不全マンション、居住者の高齢化、空き住戸の増加等、居住者の安全な生活と資産を守るためには円滑なマンション建替えが急務となっています。

改正前制度の限界と改正マンション建替法(マンション敷地売却制度)の必要性

 改正前のマンション建替法においては、マンション議決権の4/5以上の決議、マンション建替組合の設立を経て、建替えるマンションへの権利変換を行うというのが一般的な方法でした。
 この場合、建替組合において権利者相互の意見・権利を調整するのに、多大な負担が強いられることや、容積率に余裕がないため、建替え後の余剰床(保留床)の確保及び処分が十分でない場合、建替えに係る権利者の金銭的負担が大きいことが問題点として挙げられます。

 上記を踏まえ、平成26年マンション建替法においてなぜマンション敷地売却制度が制定されたのでしょうか。まず既述の通り、マンション建替えにおいては、各区分所有者の金銭的負担が強いられ、「建替え」という狭い選択肢だけでは合意形成が進まないという問題点があります。従って、区分所有者の個別の事情や要望に対応できる柔軟な選択肢が無ければマンション再生は困難になると言えます。 そこで、敷地売却という過程を経ることで、個々の資産の金銭化が可能になり、現在のマンションから転出するか、予算に応じた住戸を取得するか等、柔軟な選択を行えるようになることにより、合意形成の可能性が高まります。

(出典:国土交通省)

改正マンション建替法(マンション敷地売却制度の概要)

 マンション敷地売却制度を活用するには、まず、特定行政庁によるマンションの耐震性不足の認定を受ける必要があります。その後、下表の手続きにより敷地売却が行われます。

 (出典:国土交通省)

 また、当制度においては容積率の緩和措置も設けられており、これにより区分所有者の金銭的負担減が期待されます。

(出典:国土交通省)

改正マンション建替法の展望

 阪神・淡路大震災及び東日本大震災を踏まえ、建物の耐震不足の改善は早急に行われる必要があります。今回の法改正により、耐震性不足のマンションの再生促進が強く望まれます。今後は、既存のマンションの消化容積率が低い場合(敷地権も売却により建替を想定した場合における経済的負担が0、もしくは低額で済む場合)を中心に、当制度の利用が広まるものと考えられます。

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